体験局の作り方.zip

2020/11/18

体験局の作り方.zip

はじめに

「体験局」は、2020年4月21日に公布・施行された総務省告示に基づく「無線技術に対する理解と関心を深めることを目的として社団が臨時に開設するアマチュア局」のことで、無線従事者資格を有しない者が一定の条件のもと、アマチュア無線の運用を認められるものです。

さて、そんな体験局を7コールクラブが申請したのは、公布の約2時間後です。
(自称申請が日本一早かった体験局!)

JJ1WTL局によると、制度開始から半年が経過したバーチャル・ハムフェス開催日(11/1)現在、全国の免許実績は13局しかなく、その内現存するのは、わずか8局です。
私が春に悩んだように、興味はありつつも書類の書き方がわからないから申請を躊躇っている人が多いのでは?と思い、公開することにしました。

体験局の大きな特徴は、記念局より開設しやすいことです!
大切なことなので、もう一度言います。
体験局は、記念局よりカンタンなのです。

「8」のコールサインがもらえて、無資格者も運用できる体験局。
ぜひ、あなたも仲間とチャレンジしてみませんか?

記念局よりカンタンな理由
「セルフイベント」でもOK

早速、体験局の開設要件を見てみましょう。

【体験局】

⑴ 次の条件に適合すること。
ア 申請者は、営利を目的とするものでなく、無線技術に対する理解と関心を深めることを目的として通信を行おうとする社団であること。
イ 行事等の趣旨・内容等は、政治的又は宗教的なものではなく、並びに相当の公共性を有するものであること。
ウ 無線従事者が立ち会うものであること。
エ 開設期間は、行事等の開催期間からみて適当なものであること。

(2) 次に掲げる事項を確認できる書類を申請書に添付するものであること。
ア  立ち会う無線従事者の氏名及び無線従事者免許証の番号を記載した書類
イ  当該行事等に伴う無線局の開設について主催者の同意を得ていることが確認できる書類

電波法関係審査基準(平成13年 総務省訓令第67号)
24 無線技術に対する理解と関心を深めるため社団が行事等の開催に伴い臨時に開設するアマチュア局

記念局のそれと比較してみます。

【記念局】

(1) 行事等は、国、地方公共団体又は公益的団体が主催、後援、協賛等をしているものであること。
(2) 行事等の趣旨・内容等は、政治的又は宗教的なものではなく、相当の公共性を有するものであること。
(3) 当該アマチュア局を運用することにより、行事等を記念すること及びその意義を広めることができるものであって、かつ、アマチュア無線に対する理解の増進、アマチュア無線の健全な普及、発展等に寄与できるものであること。
(4) 申請者は、連盟又はアマチュア業務の健全な普及発展を図ることを目的とする社団であって、行事等に密接な関係があるものであること。
(5) 申請者が当該アマチュア局を運用することにより当該行事等を記念すること及びその意義を広めることについて、行事等の主催者から了解を得ていることが確認できるものであること。
(6) その運用期間は、行事等の開催期間からみて適当なものであること。
(7) アマチュア局を行事等の開催地内に設置する場合は、当該行事等の主催者からの同意を得ていることが確認できるものであり、必要に応じて書類によりその旨が確認できるものであること

電波法関係審査基準(平成13年 総務省訓令第67号)
22 行事等の開催に伴い臨時かつ一時の目的のために運用するアマチュア局

蛍光ペンを引いた部分にご注目!
記念局は、国、地方公共団体又は公益的団体が主催、後援、協賛等をしている行事等であり、行事等の主催者(国、etc.)から了解を得ていることが確認できる必要があります。
実務的には、県知事、市長、区長、公立○○センター長のハンコが押してある書類が必要です。

逆を返すと、体験局はセルフイベントでもOKなのです。
(政治・宗教的なものではなく、相当の公共性を有するは必要あります)

事実、7コールクラブ体験局「8J1YAB」もセルフイベントです!

セルフイベントを作ろう

では、早速「行事等」になるセルフイベントを作るわけですが、ここではヒントとして、以下の2つを紹介します。

【7コールクラブ体験局のセルフイベント】
1) 行事等は、7コールクラブが実施する「7コール発給開始30周年事業」
2) 体験局は、7コール発給開始30周年記念局「8J1-7CALL」の公開運用に併設して行うことを基本とする
3) 行事等(記念局公開運用)の主催者は、7コールクラブなので、7M4VQJのハンコでOK

【静岡大学MOT鈴木ゼミ体験局(8J2YAB)のセルフイベント】
1) 行事等は、静岡大学工学部次世代ものづくり人材育成センター地域連携部門(部門長: JJ0RHL)が実施する「無線通信を通じて児童生徒に科学技術に対する興味を涵養する “秘密基地づくり”」プロジェクト
2) 体験局は、地域住民のためのものづくり理科教室「浜松 Rain 房・ダビンチキッズ」の放課後活動として、都度無線技術を体験できる機会を設定する
3) 行事等(放課後活動)の主催者は、JJ0RHLなので、静岡大学学長のハンコは不要、JJ0RHLのハンコでOK


このように、自分が主催者のイベントでOKです。
7コール発給開始30周年事業は、7コール発給開始30周年を盛り上げるため、1年間かけて記念局、ハムフェア出展、グッズ制作・頒布などをする活動の全部をまるっと含めた概念です。

体験局の開設に、記念局の有無は関係ありません。
1) 「○○市アマチュア無線クラブ発足xx周年記念事業」という名前で、1年間をかけて、公開・移動運用の強化、ハムフェア・市民まつりへの出展、グッズ制作・頒布をする一連の活動を「行事等」とする
2) 体験局は、社団局の公開運用に併設する
どうでしょう、想像よりかなりハードル低いでしょう?

もちろん、人のイベントに乗っかってもOKです。
そのイベントの主催者からのハンコは必要(後述)なのですが、県知事、市長、etc.である必要はなく、○○グルメフェスティバル実行委員会や、××沼バス釣り愛好会親睦イベント企画者でいいわけです。

これが、記念局よりカンタンな理由です。
これってすごいんです!記念局より大きくカンタンと強調しておきます。

既存のクラブ局と設備共用できる

体験局は記念局と違い、変更申請では開設できず、一律「新規開局」となります。
※ 8J1-7CALLは、既存クラブ局JS1YEYの指定事項(呼出符号)変更により実現しています

クラブに所属していなくても、アマチュア無線家が2名以上集まれば、体験局を開設可能です。

体験局は、これまで不可とされてきた「社団局同士の設備共用」が例外的に認められています!
もともと、個人局と社団局の設備共用は認められているので「社団局―体験局」という設備共用だけでなく「個人局ー社団局ー体験局」という設備共用も可能です。

開局申請書類

前書きが長くなりました!
ここからは、実際に関東総合通信局に提出した書類(個人情報部分など微修正)をお見せしつつ、開局申請書類を説明します。
※ 免許が下りることを保証するものではなく、ヒントとしてご利用ください

通常のクラブ局と同じ 無線局免許申請書
無線局事項書
工事設計書
定款
構成員名簿
【クラブ局用】電子申請Liteアカウント
体験局特有の書類 体験局開設要望・同意書
(会場の)同意書
体験局計画概要
社団概要
体験局運用計画表
立ち会う無線従事者の氏名及び無線従事者免許証の番号
【15 備考欄】の注記

体験局は、特殊なクラブ局という扱いなので、通常のクラブ局の開設に必要な書類は全て必要です。
クラブ局の開設には、定款(ていかん)や構成員名簿など、個人局とは違う書類が必要なので、他のウェブサイトで調べてみてください。
また、代表者個人局の電子申請Liteアカウントを使い回すことはできず、新規取得する必要があります。

以下、体験局特有の書類を解説します。

体験局開設要望・同意書

総合通信局に対して体験局を開設したいことを伝え、主催者である自分がイベント内に無線局を開設することを同意する書類です。
7コールクラブ体験局は、セルフイベント形式のため、本来2つの性格を持つ書類を1枚にまとめました。
(次項「(会場の)同意書」も参照)

体験局開設要望・同意書

(会場の)同意書

セルフイベントの場合も、常置場所で運用予定ならともかく、会場内に無線局を開設する同意書は必要なようです。
セルフイベントだし、移動局だからいらないだろう…と用意せず申請したところ、補正されて「8J1YAA」を逃しました!!

もし、○○グルメフェスティバルや、××沼バス釣り愛好会親睦イベントに相乗りする場合は「体験局開設要望書」と「体験局開設同意書」にするのがいいと思います。

7コールクラブでは、記念局の公開運用をするメインの運用地をすみだ生涯学習センター(墨田区)とし、同センターに同意書をお願いしました。

(会場の)同意書

体験局計画概要

今回申請する「体験局」をどのように運営していくかをまとめた書類です。
頼まれて出したものではないので本来必要なのかは不明ですが、審査する側も一体どんなイベントで運用するのか気にするでしょうから、この程度の情報はまとめておいた方がいいと思います。
※ 申請当時は記念局がまだ免許されていない状態(= 総通の手元にある)だったので、行事等 = 7コール発給開始30周年記念事業の説明は「記念局申請時に提出した企画書を援用します」としました。実際に申請する際には、行事等の説明として、イベントのパンフレットや企画書を添付する必要があります

体験局計画概要 – 1
体験局計画概要 – 2

社団概要

私たちのクラブが何者かをまとめた書類です。
これも、頼まれて出したものではないので本来必要なのかは不明です。
開設要望書や計画概要に盛り込むのもいいと思います。
(7コールクラブは新設の実績がないクラブなので用意しました)

社団概要

体験局運用計画表

電波法関係審査基準に「開設期間は、行事等の開催期間からみて適当なものであること」と書かれているので、ワンショットのイベントではない限り、開設期間の合理性を説明するのに必要でしょう。

新型コロナウイルス感染症の関係で実現できていないのですが、概ね3か月に2回のペースで運用することを原則として提出しました。
月イチだと運営が大変ですし、3か月に1回だと都度申請してくれと言われるかな?と考えたからです。
一番最初の日付が確定できるもののみ記入し、他は画像のように月だけの記入でOKでした。

ワンショットの「○○市民祭り」に参加する場合は、こういったカレンダー的な情報よりも、自分たちのブースの場所や市内のボーイスカウトが体験しに来ますというような解説を体験局計画概要に盛り込んだ方がスマートでしょう。

体験局運用計画表

立ち会う無線従事者の氏名及び無線従事者免許証の番号

電波法関係審査基準に必要と書いてあるので、マストです。
名前の通りの書類で、名前と番号をずらーっと記入しました。
構成員名簿と別の書類なので注意!

立ち会う無線従事者の氏名及び無線従事者免許証の番号

【15 備考欄】の注記

無線局事項書の【15 備考欄】に、この申請は「無線技術に対する理解と関心を深めることを目的として社団が臨時に開設するアマチュア局」としての開局申請ですと記入しました。

また、同じエリア内で複数の移動局を開設しないようにという補正が来た(キチンと読んでください…)ので「この申請は、体験局としての開局申請のため、同一エリアにおける2局目の移動局として開局することに問題がない旨を確認済みです」と補正を返しました。

上記「複数の移動局」の補正は、記念局系専門担当者ではない、ファイルを一番最初に開いた担当者が依頼してきたものなので、書いておいた方がいいかもしれませんね。

申請のコツ

ここでは、いくつか申請のコツをまとめます。

1) 体験局の(無線局免許状上の)名前は、クラブ名になります
既存のクラブ局の定款を使い回す方が多いと思いますが、もし、無線局免許状に「みんなの7コール体験局(例)」と印字させたい場合、定款上の社団名称を「みんなの7コール体験局」とし、新しく別の電子申請Liteのアカウントを取得する必要があります。
そうしない場合でも、運営上クラブのウェブサイトやQSLカード上で、勝手に「みんなの7コール体験局」を名乗って問題ありません。
(これは従来からの記念局でも同様で、7コール発給開始30周年記念局の無線局免許状上の名称は「7コールアマチュア無線クラブ」です)

2) 設備共用のコツ
8J1YABのリグは、8J1-7CALLの新スプリアス技適機をまるっと設備共用しています。
8J1-7CALLには、第46送信機まであるので管理がとても大変です。
そこで、こんなことをやってみました。

【15 備考】全ての送信機は8J17CALL(7コールアマチュア無線クラブ/関A第XXXXXXX号)との設備共用で、送信機番号は一致させました

送信機を撤去して「結果的に」番号が歯抜けになるのはOKと知っていたのですが、最初から「意図的に」ここまで歯抜けになっても問題ありません。

3) CWの免許について(おまけ)
関東総合通信局では、当初どうやらCWは体験局に免許されなかったようです。
…というのも、CWは体験運用不可だからです。
いろいろ作文してチャレンジしたところ、2か月の審査の末、関東初としてCWも免許されました!
最近免許された8J1YACもストレートで免許されているので、現在はおそらく制限なく免許してくれます。
4630kHz・10MHz帯はA1A単体、その他のバンドは3HAなど「3系」で免許されますが、無資格者はCWの体験運用不可なので注意です。

体験局運営者の心得
by 7K1BIB/8J2YAB

1) シナリオ台本を用意しよう!
体験運用の「連絡の設定及び終了に関する通信操作については当該操作を指揮する無線従事者が行うこと」とされています。
これがカンタンなように見えて、慣れないのでこちらも結構あたふたしてしまいます。
何よりも、体験者はPTTボタンを押して話すことも難しいのです。
7コールクラブでは、事前にこんなシナリオ台本を用意しました。

私たちが「体験」したびっくりは、フォネティックコードや和文通話表などではなく、PTTを押して話す、了解、どうぞなど、無線の基本作法がなかなか難しいようです。
開局当時を思い出しながら、あなたのシナリオ台本を用意しましょう!

2) 体験証なんていかが?
せっかく体験しにきてくれたのですから、アマチュア無線らしいアピールをしましょう。
7コールクラブでは、こんな記念証を用意しました!

会場で記念撮影し、メールで送った写真を仮免(笑)に貼ってもらえるようになっています。
裏にQSOのログを記入すると、開局後に運命の出会いがあるかも?など、クラブ内で盛り上がっています。
また、実際に資格を取得したい!と言われた時の資料(JARD講習会のQRコードでもいいかも)を用意しておくとFBです。

3) アマチュア無線家と体験者の「おもしろい」は違うかも?
私たちアマチュア無線家にとって、コンディション変化により、うんともすんとも言わなかった無線機から突然遠くの声が聞こえてくるのは、まさにアマチュア無線の醍醐味です。
もちろん、無線や電波そのものに興味があってチャレンジしに来る方もいますが、全ての体験者がそうとは限りません。
一方、どんな体験者も、北海道から沖縄までクリアな音声で確実につながるスマホを毎日使っているのです。
CQを連呼して「シーン…さっきまでつながってたんだけどなぁ」という言葉は、体験者の目にどう映るでしょうか?
HFがうまくいかない時は、潔く2m/430MHz帯のFMにQSYして「おっ、山手線の逆側ですね!私たちはこうやって、日本全国の街や駅と交信するのを楽しんでいるんですよ」などの「仕込み」も必要かもしれません。
目の前の体験者に資格取得させることをゴールとするのではなく、アマチュア無線に触れてもらい「何だかよくわからないけどおもしろかった」と帰ってもらうことを目標にすれば、イマドキ家に帰ってからGoogleで「アマチュア無線 魅力」と検索すれば情報はいくらでも入ってきますし、メールで問い合わせを受けることも可能です。
私たちアマチュア無線家に「DXer」「ラグチュー好き」「自作派」がいるのと同じく、体験者も十人十色なのです。

4) 体験者同士のQSOはいいぞ!
偶然の産物だったのですが、体験者同士のQSOはすばらしいです。
「はじめてです」「私もです」と、気持ちを共有することができ、リラックスして話せるようです。
そこから「東京会場では女性は私しかいません」「こっちなんて女性ばかりで男はオレひとりです!」なんて会話に発展するかもしれません。
体験局をお持ちの方、今から開設される方、ぜひスケジュールを組んで体験者同士のQSOをしましょう!

編集後記

あなたがCQを出しているところに、体験局が呼んできたらどうでしょうか、ドキッとしませんか?
相手は、八重洲もアイコムも、ダイポールアンテナも知りません!
体験運用は、私たちアマチュア無線家が体験してこなかったアマチュア無線なのです。
この情報が、どなたかの役に立つことを心から祈ります。

免責事項

このページで紹介している情報は、実際に提出し免許を受けた書類を紹介していますが、免許が下りることを保証するものではなく、一種のヒントとして公開しているものです。
申請した結果、もっと簡略した書類でOKだった、こんな補正が来たなどの情報があれば、ぜひ教えてください。

Posted by 7M4VQJ